桑葉で糖尿病予防
桑葉は、シルク(絹)の原料となる繭をつくる蚕のエサです。桑の木はその葉だけでなく、木全部がクスリでもあります。桑の枝は桑枝(そうし)、桑の葉は桑葉(そうよう)、桑の根の皮は桑白皮(そうはくひ)、桑の実は桑椹子と呼ばれる漢方薬の原料となっています。
中国の本草学の最初の書として知られる「神農本草経」の中には、桑の根の皮や葉がとりあげられ、それぞれの薬効について具体的な紹介を行っています。たとえば桑葉を日陰日干ししたものを「神仙茶」と名づけ、風邪の咳や百日咳に効き目があり、高血圧の予防や滋養強壮剤としても効果があることが記されています。
日本でも、最初の薬書「喫茶養生記」(栄西禅師1141〜1215著)に、桑粥桑湯を服用すれば、水をいくら飲んでも渇きをおぼえる飲水病(糖尿病)に数日で効果が現れると述べられています。
また、桑の根の皮、桑白枝は、日本薬局方に証約の一つとして収載されており、消炎性利尿剤、緩下薬、鎮咳去たん薬として漢方に配合して用いられています。
民間療法としては数多くの言い伝えがあります。たとえば、桑茶を飲めば高血圧に効き、貧血症、低血圧症などにも効果があるとされています。
このように、古くから生活の知恵として家の近くに植えてある桑を利用して、動脈硬化や高血圧症、糖尿病などの予防や治療に活用してきたという事実に眼を向けることは、桑葉の効用を理解するうえで大切なことです。
桑葉の栄養成分
桑葉はケールと比べ栄養成分が豊富。桑葉の栄養成分をケールの栄養成分と比較した場合、ビタミンA効力は6倍、ビタミンB1は2.9倍、ビタミンB2は4.4倍、ビタミンEは13.7倍、総クロロフィルは1.5倍、SOD活性は3.7倍、食物繊維は20.4倍あります。
また、γ-アミノ酸が38mg/100g、フラボノイドの一種であるルチン、イソクエルシトリンがそれぞれ67、170mg/100g含まれています。
桑葉特有成分
最近の研究により、桑葉には血糖値の上昇を抑制し、糖尿病を予防する効果のあることが明らかにされました。その有効成分は桑以外の植物にはまだ発見されていない成分です。実際に糖類の分解に関係する酵素を使った実験によって、桑葉特有成分は砂糖やマルトース(ブドウ糖が2個結合した糖)などオリゴ糖を分解する酵素α-グルコソダーゼの働きを強力に阻害することが明らかになりました。桑葉特有成分は結果としてブドウ糖の血中への吸収を阻害する作用があるため、血糖値の上昇を抑えることになります。
糖分解酵素の働きを阻害する桑葉特有成分
私たちが食べるデンプンや砂糖は、糖分解酵素の働きでブドウ糖に分解されて、小腸から吸収されています。桑葉特有成分は糖分解酵素(α-グルコシダーゼ)の働きを阻害する作用で、ブドウ糖の吸収を抑え、食後の過血糖値を抑制します。また、小腸で吸収されなかった砂糖やマルトースなどのオリゴ糖は、大腸に運ばれます。便中の水分量を増やしたり、腸内細菌のエサとなり、腸内環境環境を整え、便通を改善する作用もあります。昔から桑葉茶は、水をいくら飲んでも渇きをおぼえる飲水病(糖尿病)に効き目があるといわれてきましたが、その有効成分は桑葉特有成分だったのです。